胡蝶泉(戯曲)

第三場 文化大革命

中央に『貧下中農最高法廷』と書かれた横断幕。
何本かの紅旗が翻る。上手に軍幹部がいて横にジャーナリスト。
ふたりの男女が引き出されている。
中央に女幹部が立って演説をしている。
周りを紅衛兵と民兵が取り囲んでいる。

(女幹部)「二人は極秘会議を開き共産党打倒を謀議した」
(男)「うそだ!」
(女幹部)「嘘なものか。お前は精華大学のエリートではないか」

(男)「確かに技術者ではあるが人民の敵ではない!」
(女幹部)「ええいだまれ!この女も大学出の人民の敵だ。
ふたりで密会している所を目撃されているのだぞ」

(女)「私達は人民の敵ではありません!」
(女幹部)「お高くとまってんじゃないよ人民の敵!
皆どう思う?生かすべきか、殺すべきか?」

(民兵たち)「殺せ!人民の敵!共産党万歳!」
稲妻が走り雷鳴が轟く。

ー暗転ー

スポットが軍幹部とジャーナリストに当たる。
(ジャーナリスト)「人間をこんなにやたらに殺してよいのですか?」
(軍幹部)「これは大衆闘争ではないか。プロレタリア独裁というのは
民衆の専制である。軍もこれには手出しができない」

ー暗転ー

稲妻が光り雷鳴が轟く。
闇の中で民兵の声が響く。
(民兵たち)「二人が逃げたぞ!探せ探せ!」

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