君に逢えたら

 ちょうど見ごろを迎え、桜の木は私たちを待っていたかのようにちらほらと花びらを踊らせてみた。

思わず笑っているのを、自分でも分かった。
 
 「…なんだろ。この木見てると、心が落ち着かない」
突然そう言ったのは、美紗希だった。

「何かあったの?」
「ううん。…なんか、怖いの」
美紗希は胸の前に硬く拳を握って、ふるりと小さく震えた。

 その時、美紗希が何を思ってるのか、何を感じているのか、全く分からなかった。
 
 けど今は、ちゃんとに分かるよ。
 
 …ゆっくり、しかし大きく近づく【何か】を、美紗希は敏感に感じていたんだね。
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