~境界線~君だけの声が聞きたくて
「おーい、美月チャン居る?」
保健室のドアからハル先輩の声が聞こえ、慌てて体を離す。
「ハル先輩?!どうしたんですか?」
「あっホントに居たー。気持ち悪いんだって?大丈夫??」
どうやらあの黒髪の男の子から聞いたらしく、心配して見にきてくれたみたい。
あの時ハル先輩は後輩に囲まれていて、こっちの状況を知らなかったらしい。
それよりも抱き合ってるのを見られなくて本当に良かった。
カーテンがかかっているとはいえ、抱き合っていることくらい影で分かるのだ。
「あっ、もう大丈夫です!ありがとうごさいます」
「次気持ち悪くなったら俺にいいなよ?白馬に乗って迎えに行くからさ」
ニカっと笑うハル先輩は冗談なのか本気なのかよくわからなかったが、多分この人けっこうバカだから本気だと思う。
「じゃあもう行くねレオ。ありがとね」
「……おう」
保健室から出て明日噂になってたらどうしようとか、あの黒髪の男の子に会ったらお礼言わなきゃとか色々考えてたら、前を歩いていたハル先輩が止まった。
「ねぇ、仲いいね。」
仲いい?レオの事かと思い、誤解されないように曖昧に返す。
「うちの家、お父さん居ないしお母さんも夜は仕事なんで仲いいんですよ」
「ははっ、羨ましいねー。道理で俺はさっき睨まれた訳だ」
何故か前を向いて振り返らないハル先輩を不思議に思いながらも、これからはレオと帰ることを伝えなきゃ。
「ハル先輩、私これからは弟と帰ります。すみません」
「……弟ねぇ~、まぁまた帰りたくなったら言ってね」
まるで弟を強調したような言い方に内心ドキッとしながらも、この人はバカなのに鋭いと思った。
その後は特別離したりはしないで、教室まで送ってくれた。
すでに午後の授業が始まっていて、自分の席に着くと、ゆずから手紙が投げられてきた。
“何があったか後で教えてね♡”
♡とかつけて絶対面白がってる!
ゆずを見ると案の定ニヤニヤしていて、授業中なため否定するに出来なくて早く終わることを祈った。