~境界線~君だけの声が聞きたくて
時計の針が12を廻った頃、スヤスヤ寝ていた私はトイレがしたくなって、目が覚めた。
扉を開けようとすると、奥のほうからお母さんとお父さんの声が聞こえてくる。
ーーー何だろう?
そう思いながらも扉を開けて、廊下にでる。それに反射してどんどん大きくなる声。
リビングのドアの前に立った時、それは聞こえてしまった。
「〜〜っ、どうして言ってくれなかったのよ!」
「言えなかったんだ、すまなかった」
「私は…私たちは、どうすればいいのよっ!!」
何の話をしているのかなんて分からなかったけど、お母さんが泣いているのだけはわかった。
静かに扉を開けると、二人が驚いたように目を見張った。
「……ママ、パパ……けんかしないで…」
ポロポロと瞳から涙を流し、絞り出すように言った私の言葉を聞いて、またママが涙ぐむ。
「そうね…ごめんね。ビックリさせちゃったね、もうしないからお布団戻りなさい。」
「…………うん。」
その次の日からはいつも通りで、いつの間にかそんな出来事を忘れていた。