~境界線~君だけの声が聞きたくて
「出来たわよー」
その声が合図のように私とレオは椅子に腰掛ける。
トンとテーブルに置かれたのは私の大好きな、シチューだった。
お母さんの久しぶりの手料理だけでも嬉しいのに、大好きなシチューを作ってくれた事に余計嬉しくなる。
テレビを見ながらスプーンを口に運ぶ。
ふんわりと優しい味が口に広がって、つい顔が綻んでしまった。
「美味しいねっ!」
レオにそう言えば、暖かい目で愛おしそうに“あぁ”なんて微笑んでくるものだからーーー慌ててテレビに視線を逸らした。
「………ねぇ、あなた達、変な関係じゃないわよね…?」
不意に、お母さんが真剣な声で聞いてくるものだから、一瞬何を言っているのか分からなくてフリーズしてしまった。
変な関係…
私とレオがってそうゆう意味……?
何で…
もしかしたらキスしたりしてるトコ見られたとか??
ーーハッと気がついた時には、レオが口を開いていた。
「何言ってんだよ、母さん。こいつがブラコンなだけだろ?」
ハハッと笑ってこっちを見たレオの目が、俺に合わせろと言っている。
「はぁ?レオがシスコンなんでしょー!」
その目に応じて私も乗る。
こんな、ありきたりのキョウダイの言い合いを、どこまで信じてもらえるか
そんなの分からないけれど、疑っているのは明白だった。
「そうね……そんな訳ないわよね、」
お母さんの呟きはまるで自分自身に言い聞かせているようだったーーー。