~境界線~君だけの声が聞きたくて
少しの沈黙の後レオが口を開いた。
「……………冗談だろ?」
冗談…?
冗談だったらどんなに良かったんだろう
レオに問われて思ってもない酷い事をベラベラと話す。
喉から絞り出すように
「だって……、普通に考えてキョウダイなんて可笑しな話じゃない?確かに前は私も依存してたかもしれないけど…今は、違う。」
レオの顔がどんどん歪んでいく。
それでも私の口は止まらない。
「あの時はレオしか居なかっただけ。だからレオに縋った。……ただ、それだけ…」
こんな事私が嘘でも言われたら、きっと耐えられないだろう。
恨まれたっていい、嫌われたっていいから。
私からレオを突き放さなきゃ。
そしたらきっとレオも私から離れやすくなる。
「……美月は…、優しいよな。」
ふいにそう言ったレオの顔は悲しそうで、今にも泣きそうで…
ーーーーー美月は優しいよな。
その言葉に、逆にわたしが、泣きそうになってしまった。
泣きたいのはレオの方なんだからと、瞳に溜まった涙を零さないように少し上を向く。
「もうダメなのか。もう………今のままじゃ無理なのかよ?!」
私の肩を強く掴んで
一回目は呟くように、二回目は私に問うように感情的に叫ぶ。
「……………うん。ごめん。」
苦しくてもうレオの顔は見えなかったけど、無理して絞り出すように言ったのは分かった。
「そか…、分かった。怒鳴ってごめんな?」
今までで1番。
あんな顔見た事もない。
そんな顔。
レオはその事実が受け入れたくないのか、逃げるように来た道を辿るように教室から出て行った。決して振り返らずに。
きっとこうなるって分かってたんだと思う。
ーーーううん
思うじゃなくて私の考えも分かってた。
だから最初驚きもせず、美月は優しいよなって言ったんだ…。
私は優しくなんかない。優しかったらレオの事を傷つけてなんかない。
それでも私の気持ちを、考えを知った上で、もうダメなのかと聞いたんだ。
レオの最後の賭けだったんだーーーー。
レオの後ろ姿を見た時に中学の頃のレオと重なった。
もうあの頃みたいに“やだ、離れたくねぇ”って言ってくれないんだね、
もうその腕で抱きしめてはくれないんだね。
自分でも矛盾してんのは分かってるのに、心のどこかで微かに期待していたのかもしれない。