シスコン総長VS溺愛総長!? 1R
あまりにも、雑音の方が大きすぎて。


自分の声さえも聞こえなくて、本当にナオの名前をあたしは呼んだのだろうかと少し不安になった。


だけど、ナオがゆっくりだけど振り向いてくれたことで『あぁ、聞こえてたんだって』気づいた。


「なに?」


うでの力は込めたまま、あたしに灰色の瞳を向ける。


なにって返されると答えづらい‥‥


「えと、その」


しどろもどろになるあたしに、ナオはハルに目配せをした。


「わかりました」


ハルはそれだけで何かを感じ取ったのか、どこかへ向かって歩き出した。


それを視界に端で追いながら、小さく息を吸った。


不安な気持ちが、小さな震えとなって表れ始めたから。


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