シスコン総長VS溺愛総長!? 1R
あの状況が怖かったわけじゃない。


カナタが、怖かったわけじゃない。


あたしが、怖かったのは‥‥


「ナオが‥‥怖かったよ‥‥っ!」


「!!?」


そう、あたしは誰でもない"ナオ"が怖かったんだ。


「お‥‥れ?」


ナオの困惑したような声が聞こえた。


まだ、嗚咽が止まらないあたしに回る手がゆっくり離れる。


「‥‥ヒッウ‥‥ック‥‥」


歪んだ視界に映るナオは『訳が分からない』といった顔をしていた。


手の甲で何度も拭うが、袖がビショビショになるだけで一向に涙は止まらなかった。


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