シスコン総長VS溺愛総長!? 1R
何もマナの格好はせずに家を出た。


そんな、気分じゃなかったから。


鏡の中で逢えたとしても、それは偽りであって本物ではない。


俺は、偽りと本物を支えに生きてきた。


そして、本物を失った。


玄関の前にある等身大の鏡で自分を写し、鏡の中の自分と手を合わせた。


顔のパーツを触るように、鏡に指を這わせる。


眉、目、鼻、口。


すべてをなぞり終えたあと、すごく虚しくなる‥


何度鏡の中を覗こうが、そこにマナがいるわけじゃない


水に映る幻影と一緒だ。


「‥‥行ってきます」


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