恋あめ
真っ直ぐ真っ直ぐ台へ歩いたのに、くろい何かが私の足にぶつかった。
「キャァッ!!」
視界がぐるりと回った。
(嘘だ...。)
ゴッ!
鈍い音が体育館に響いた。私はマイクのコードに引っ掛かり、そのまま転けた。コードが突っ張られたマイクは安定感を失い、そのまま校長の頭に直撃した。
「「「「「「ぁ....」」」」」」
全校生徒、教諭、保護者、そして私までもが驚きのあまり声が出せなくなった。
(私は、また失敗してしまった...。)
半分泣きながら、私はうずくまっていた。嫌な予感が的中してしまった。
すると生徒会長が前に出て皆に話しかけた。
「皆さん、申し訳ありません。生徒会長である私が迂闊だったために、代表の南園さんがマイクのコードにつまずいてしまいました。もう一度再開したいのですが、よろしいでしょうか。」
「松岡君、再開しますょ。南園さん、さぁ、前に。」
マイクのぶつかったところを押さえながら校長が言った。
校長の声で我に帰り、私はいそいそと校長の前に出た。
ふぅ、
一息つくと、私は覚えていたセリフを言った。
「春の良き日に....」
読み終えると、私は急いで台から降り、カ-テンの裏に入った。そしてすぐに生徒会長を探した。
「松岡先輩は、松岡先輩はどこですか!?」
私は声のト-ンを下げて松岡先輩を呼んだ。
「はい、俺はここにいますけど?ぁ、南園さん!!」
私の声に返事をした松岡先輩は、私に手招きした。
「さっきは大丈夫だった!?怪我は?」
「ぁ、ぁの、それは大丈夫です。ぇっと、ありがとうございます!!かばってくださって...」
「良かった...。気にしないで!挨拶、上手かったよ!!HR後に俺の教室来てよ!じゃっ!!」
「ぁ、はぃ...」
松岡先輩は、左手を上げると、生徒会長挨拶のため、台にあがっていった。
(松岡先輩...)
私は先輩に尊敬な眼差しを注ぎながら自分の席に戻った。
『亜季菜、大丈夫?』
『大丈夫だよw』
知佳と笑いながらアイコンタクトをとって席についた。
(案外嫌なことばっかじゃないかも!!)
私はこれからの高校生活に希望の光を感じながら入学式を終えた。