Distance



「時間までに終わらなかったら、あんたの宿題ね」


そう言って、あたしは再び席に着いた。


「・・お前、“ドS”だろ」


大谷が、プリントの束をあたしに渡しながら言う。


「別に」


何をイキナリ・・
と思ったけど、サラっと流した。


「いや、絶対そうだって。俺にココまでやらせんだもん」


“ココまで”って・・
頭下げたこと言ってんの?

確かに考えてみれば、男子にすら「○○して下さい」なんて言ってるとこ見たことないかも。


そう思うと、また可笑しくなった。


「・・まぁ、“M”ではないだろうね」


少し笑いながら答える。


「あたりまえだろ。お前が“M”だったら、他の奴ら“超ドドドドドM”じゃん!」


大谷も、少し笑って答えた。


「“ド”が多いよ。しかも“超”とか付けんな」




・・・どうしてだろう。

大谷と2人の時間は、あたしが一番嫌いな時間だった。


けど、今日は少し・・

ほんの少しだけ、



“楽しい”

そう思ったんだ。












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