Distance
―・・2学期 始業式





「ちょっと、平岡さん!星野さん!」


小学校からの親友、星野彩(ホシノアヤ)とのおしゃべりに夢中だったあたしは担任に呼ばれて振り返った。



「早く選んでちょうだい。もうあなたたちの分しか残ってませんよ」



そう言って、差し出されたあみだくじ。
残っているのは「4」と「7」。

あぁ・・席替えするんだっけ。



「麻耶、どっちがいい?」

シャーペンをクルクルと回しながら、彩が聞く。



「あたしはどっちでもいいや。彩が決めて」

「えぇ~、あたしもどっちでもいいんだけどなぁ・・麻耶が決めてよ」



女の子の特徴のひとつでもある、優柔不断な会話。
あたしは、担任の顔を横目で見た。
いかにも、イラつきをおさえている様子だ。



「じゃぁ、ラッキーセブンで♪」



ささいなことにも、いちいち文句をつけてくる担任のおばさん。
このままだとまた小言を言われるだろうと感じたあたしは、咄嗟にペンをとり「7」の上に「平岡」と書き加えた。




平岡麻耶(ヒラオカマヤ) 14歳。

ちょっと口は悪いけど、一応、女。
特別可愛くもなければ、不細工でもない。
勉強も、それなりに出来る。

ごく普通の女の子。





そう、ごく普通の女の子だから・・
この先に起こることなんて分かるはずもない・・



このときの“ラッキーセブン”はあたしにとってラッキーなんかじゃなく、むしろアンラッキー。



そして、あたしの初恋のはじまり。





そんなことになるなんて、
全く想像がつかなかった・・・。




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