Distance
「・・・ハァ」
あたしはため息をついて、隣の席を見た。
大谷は6時間目の途中から夢の中だ。
「起きろ!大谷!!」
あたしは、大谷の頭をノートで軽く叩いた。
「・・ってぇ。今、何時間目?」
眠たそうな目をした大谷が、頭をさすりながら言う。
「もうとっくに放課後ですけど」
「は!?やべぇ、部活遅れる!」
大谷は慌てて起き上がった。
実行委員の仕事を完全に忘れているらしい。
「残念ながら、今日も部活にはいけません」
そんな大谷に、あたしは冷たく言い放った。
「あぁ~・・そうだった」
そう言って、また机に顔を伏せた大谷。
「これ、業者別に分けてホチキスでとめて」
あたしは、大谷の机にパンフレットの束をドンッと置いた。
あたしたちの学年は、今年の6月に行われた職場体験の壁新聞を作るらしい。
さっき、大量のパンフレットをおばさんから渡された。
「うっわ、めんどくせぇ」
「文句言うな!」
あからさまにめんどくさそうな態度をとる大谷に、あたしはホチキスを渡した。
「うぃ~・・」
大谷は相変わらずやる気のない返事をして、あたしからホチキスを受け取った。