Distance
「―・・さん、平岡さん!」
「・・え!?あ、はい」
ボーっと窓の外を眺めたまま、おばさんの話を全く聞いていなかったあたしは、慌てて前を見た。
「名前、書いてください」
そう言って、おばさんが差し出した1枚の紙。
あみだくじが書いてある。
「あぁ、席替え・・・」
あたしはペンケースかたシャーペンを取り出し、くるくると回した。
1、4、6、7、・・・・
残った番号を確認して、去年の2学期を思い出した。
“じゃぁ、ラッキーセブンで♪”
あのとき、あたしが「7」じゃなくて「4」を選んでたら、どうなってたかな・・
大谷を好きになることもなかったんだろうな・・
まだ、喧嘩ばっかりしてるかな・・
「・・平岡さん!」
また一人で考え事をしていたあたしは、おばさんに怒鳴られて我に返る。
「あぁ、スミマセン」
あたしは小さくそう言うと、「4」と書かれた線の上に、「平岡」と名前を書いた。