Distance
「大庭先生って怖い?」
HRが終わり、体育館で明日の入学式の準備をしていると、さっきの席替えで隣になった、白崎貴大(シロサキタカヒロ)が声をかけてきた。
「大庭・・?」
「え?」
誰のことかわからなかったあたしが聞き返すと、白崎は不思議そうな顔をした。
「あぁ・・おばさんか」
大庭美千子(オオバミチコ)
おばさんの本名だ。
ずっと“おばさん”って呼んでたから忘れてた。
「なんで“おばさん”なワケ?まぁ、おばさんだけど・・」
白崎は、そう言っておばさんのほうをチラっと見た。
「“オオバ”だから。年齢的にもおばさんだしね。去年のクラスの誰かが付けた」
「へぇ~」
白崎は、同小だったから仲が悪いワケではない。
「アイツさぁ、ホント姑みたいにうるさいから」
あたしが嫌味っぽく言うと、白崎は「そうなんだ」と笑った。