座りの悪い盆(信州シリーズ1)
タイトル未編集

信州

信州、国道148号線を大町から北に向かうと、
JR大糸線に沿ってすばらしい山々と湖、スイス
のアルプスと見まごうばかりの白馬の山なみに、

誰人も感動する。5月の頃はまだ残雪も多く、夏
のシーズン前で村人は田植えに忙しい。

青木湖のトンネルを抜けて五竜岳、遠見岳、白馬岳
を望みながら山麓の村神城かみしろ、飯森いいもり
をとおり、白馬八方の麓、岩岳いわたけ、森上もりうえ
へと向かう。

その昔、塩の道と呼ばれた街道だ。村の焼却場の手前に
白馬台高校がある。オリンピック選手を多く生んだ
名門校である。

いつもは静かな学校が今日は何かとあわただしい。
校門を入った所に長野県警のパトカーが1台止まっていて、
もう1台灰色の県警の大型バンが奥のほうに止まっている。

なにやら学校で事件があったみたいだ。廊下を行くと
理科室の手前から『立ち入り禁止』と書かれた県警の
黄色いロープが張ってあり、理科室内があわただしい。

長野県警のベテラン田中刑事が教頭から事情聴取をしている。
鑑識が数人作業をしている。

「盗まれたものはシアン化カリウムとナトリウム
の二瓶だけですな?」
「そうです。この二瓶だけがなくなっています」

教頭は毒物薬品棚の二瓶ぶん空いたスペースを指差しながら
他の毒物の濃い茶色瓶を確認した。
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