座りの悪い盆(信州シリーズ1)
夕餉
清一が入ってきてヨネの横に座り胡坐を汲む。
「かあさん、色々聞いたよ。ヨシおばさんから」
「清二のこともかい?」
「ああ」
「できのいいお前ばかり可愛がりすぎて、ぐれたんじゃ」
「まあな。できのいい長男は東京に行きっぱなし。
できの悪い次男は、ぐれて隣村の娘と駆け落ち。
近くへ戻ってきたものの、その娘は母さんの一番嫌
いなタイプ。最悪だね、かあさん」
「そこまで分かってくれるんなら、帰ってきておくれよ」
「ああ、今考えてるとこ」
「ほんとうかい?」
「仕事はパソコンさえあれば何とかなる。
亜紀次第だね。学校のこともあるし」
ヨネ、黙って涙ぐむ。
「食事の用意ができましたよ!」
ヨシの声が聞こえて夕食が始まった。
居間に全員が集合する。
水炊きの用意ができている。いい匂いだ。
床の間を背にヨネを清一が介助して座らせる。ヨネの脇に
清一と亜紀が座ってヨシと小百合がまかないをしている。
「それじゃ、いただきましょうか?」
ヨネがそう言うと、皆一斉に、
「いただきまーす!」
と言って食事がはじまった。絶対に壊したくない幸せな
夕餉のひと時だ。涙をにじませながら、じっと野菜を噛
み締めている母の横顔を眺め清一には、
かつての一家を支えていた気丈な母の面影など、
ひとかけらも見られないほど母は気弱に見えた。
『おふくろも急に年をとってしまったものだ』
清一は心でそっとそうつぶやいた。
「かあさん、色々聞いたよ。ヨシおばさんから」
「清二のこともかい?」
「ああ」
「できのいいお前ばかり可愛がりすぎて、ぐれたんじゃ」
「まあな。できのいい長男は東京に行きっぱなし。
できの悪い次男は、ぐれて隣村の娘と駆け落ち。
近くへ戻ってきたものの、その娘は母さんの一番嫌
いなタイプ。最悪だね、かあさん」
「そこまで分かってくれるんなら、帰ってきておくれよ」
「ああ、今考えてるとこ」
「ほんとうかい?」
「仕事はパソコンさえあれば何とかなる。
亜紀次第だね。学校のこともあるし」
ヨネ、黙って涙ぐむ。
「食事の用意ができましたよ!」
ヨシの声が聞こえて夕食が始まった。
居間に全員が集合する。
水炊きの用意ができている。いい匂いだ。
床の間を背にヨネを清一が介助して座らせる。ヨネの脇に
清一と亜紀が座ってヨシと小百合がまかないをしている。
「それじゃ、いただきましょうか?」
ヨネがそう言うと、皆一斉に、
「いただきまーす!」
と言って食事がはじまった。絶対に壊したくない幸せな
夕餉のひと時だ。涙をにじませながら、じっと野菜を噛
み締めている母の横顔を眺め清一には、
かつての一家を支えていた気丈な母の面影など、
ひとかけらも見られないほど母は気弱に見えた。
『おふくろも急に年をとってしまったものだ』
清一は心でそっとそうつぶやいた。