座りの悪い盆(信州シリーズ1)
鑑識の山本が田中刑事に近づいて鎖の切り口を手にとって見せながら、
「皮手袋をはめての犯行のようです。鉄製の鎖を番線カッターで
一発で切っています。用意周到な力持ちのプロと考えられます」

「ふむ、プロ?・・・・・・かもな」
と言って田中は手帳にメモをした。

山本は、足跡の測定をした後田中に聞いた。
「この村で事件が起きますかね?」
「さあ、わからん」
田中刑事はぶっきらぼうに答えた。

それから数日後事件は起きた。青木湖の湖底から高級乗用車が引き上
げられたのだ。死亡した運転者は信濃森上の大地主、塩山家の次男坊
塩山清二35才。深夜に湖の崖の急カーブを曲がりきれずに、

ガードレールの間から猛スピードで湖にダイブしたものと思われた。
運転ミスによる事故死。だが、解剖の結果胃の中からシアン化合物
による薬物反応が出て、死因は服毒死と判明した。

という事は、自殺、他殺の可能性も出てきたのだ。
鑑識の山本は気色ばんだ。
「よし、この事件俺が解決してやる」
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