座りの悪い盆(信州シリーズ1)
その昔、塩山一族は森上から小谷おたり村にかけての
塩の道を制する豪族だった。戦後の農地改革でも山林地主
として生き残り、祖父の代まで膨大な山林を所有していた。

父の代で山林は三分の一に減少したが、それでも時価十数億
の山林であった。その父が去年亡くなった。母ヨネからの
連絡で急遽亜紀をつれて久しぶりに帰郷した。ぐれて手の

つけられなかった弟清二も隣村から駆けつけて来ていた。
豹がらのミニスカートを着た女房春子を連れて。

ヨネは弟夫婦を心底毛嫌いしていた。ことに春子とは
全く気が合わなかった。父の遺言で全財産はしばらく
ヨネが一切管理することになっていたのだが・・・・。

ヨネには唯一の妹ヨシがいて、年は離れていたが一番
気の合う肉親だった。ヨシも5年前に亭主を亡くし、

一人娘の小百合とみそらのエコーランドで可愛い
ブティックを経営していた。今年29歳になる小百合
もまた、3年前に夫と死別して母の元に戻ってきていた。
仲のよい母娘であった。

ヨネは主人が死んでからこの1年、畑仕事をしながら
この大邸宅に独りで住んでいた。時々ヨシと小百合が
訪ねて来るくらいで閑散とした塩山邸であった。


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