座りの悪い盆(信州シリーズ1)
ヨシは軽乗用車でみそらのからジャンプ台、八方ゴンドラ、
ペンション村を越え、田舎道を抜けて森上までの数キロを
急ぎ走った。

白馬山麓の旧家塩山邸は植え込み石垣に囲まれ、奥には古い
土蔵まである。広い中庭と駐車スペース。古い乗用車が1台
と軽トラが1台止まっている。

ヨネはその横に車を止めると踏み石を踏んで玄関へ駆け込んだ。
「ねえさん!ねえさん!大丈夫?」

長い廊下を走り、ヨネの寝室の障子を開ける。床からはみ出し
瞳をむいてもがいているヨネ。ヨシは駆け寄りヨネの体を起こす。

「ねえさん!救急車を呼ぶわね!」
息絶え絶えのヨネ、苦しそうにうなづいた。

ほどなく救急車のサイレンが聞こえてきた。
エコーランドの店内にいた小百合は、不安げに外を見る。

塩山邸に救急車が到着し、酸素マスクをあてがい担ぎ込まれるヨネ。
ヨシも救急車に乗り込む。村人数人が不安そうに見守っている。
< 6 / 35 >

この作品をシェア

pagetop