ミラヘノラブレター
「大丈夫か?」
「うん……。」
「……うわっ!!」
差し伸べた手を引っ張られ、俺まで転倒する。
「へへ。ほら!この方が綺麗だよ!!」
「…たくっ。」
転倒した拍子に芝生に転がる形になる。
まるで星空に浮かんでいるような錯覚さえ起きるようだった。
「ね?」
「…まあな。」
なんだかんだでいつもコイツのペース。
最初は振り回されてばかりだったけど、最近嫌いじゃない。
(…って問題だな。)
コイツは人を疑わない。
歌姫のせいか、周りの空気も優しい気がする。
気のせいだとは思うけど…そこがどこか心地いい。
「ね?」
「なんだ?」
「ヤトってココじゃない所から来たんでしょ?」
「……!!何でそれを!!」
それは爺さんとマサキしか知らないはず…!!
"ココ"以外から来て、身体能力値も違う俺はほっておけば人体実験のモルモットだった。
それを爺さんが隠してくれたから、今の俺がいる。
「ごめん。マサキさんに聞いちゃった。」
「…アイツは!!」
(帰ったら締める!!)
「ね、ヤトって本名じゃないの??」
「……。それもマサキか…。」
「ごめん……。」
サアラは珍しく少し静かになる。
まぁ…コイツは悪くないわけだしな。
隠してもバレているなら仕方ないか。
「…はぁ。他には言うなよ。そうだよ。"ココ"じゃないどこかから来た。名前も違う。
"ヤト"は俺が落ちてきたのが星の綺麗な夜だったから爺さんが"夜の旅人"って事でつけだんだ。」
「夜の旅人…。」
「あぁ。」
「本名は?」
「覚えてない。」
「そうなんだ…。」
サアラは少し俯いて星空を見上げた。