まだ好きです(完)
クリーム色のカーテンがゆらゆらと揺れた。教室には「もう一つの家族になろう!」と勢いのある字で書かれた、クラススローガンが堂々と貼られていた。これ、雛と俺で考えたんだっけ。まじで…なつかしい。


雛…あれから、何してんだろーな。顔見てない。俺の予想では、顔腫らしてるんじゃねーかって、不安だったりする。雛は、めったに泣かないけど、人のためにだったら、結構泣いてる。でも、この前の涙は…初めて俺に見せた自分の感情だったのだろうか?



「駿ー!やほー。」

目の前に、何人かの女子軍団。この温かいカーテンから入る日差しを封鎖して女子軍団は、俺の前に立った。机にうつぶせになって寝ていた俺は、ゆっくりと起き上がった。髪、寝癖でちょっとはねてるようだ。


っていうか、この人たち…だれだっけ。


「あ、ごめんね、私達、瀬羅の友達なんだけどー。」

へえ。瀬羅、まだ転校してきてそんな経ってないのに、友ダチいたんだな。


「うん。」


「瀬羅、いつ退院すんの?知ってる?」

「んあー。分かんねー。最近病院行ってないし。」

「そうなんだ。なんか、瀬羅の事気になってる、男子結構増えてきてるよ!駿も取られないようにガンバレ!」


「え。俺、瀬羅の事、そーいう風には思ってねーよ。」


あ。つい本音が…。でも、これが俺の今の気持ちだったりする。まだ告白の返事はしてないけど、そろそろ言おうと思ってる。そして、またアイツに会いに行きたい。



「そっかー。みんな駿と瀬羅付き合ってるってうわさしてるよ。こりゃ、大事件!!!!!!!」


そうですかぁ~。まあ、誤解されてもしょうがねえよ。だって、俺があいまいに瀬羅に接してるから。ちゃんと、ふろうとしてねーから。



「5時間目はじめるぞー。皆、席に着け。」


先生の太い声で、皆はいっせいに自分の机にすわった。机を動かす音が、いつにも増してうるさく感じた。



俺はこっそり、机の端に「雛」と書いて消した。




< 161 / 202 >

この作品をシェア

pagetop