まだ好きです(完)
それから、私達は、仲良くなった。日に日に、緑色に染まる桜の木を校舎から覗き込む。風が吹いて、桜の花びらが、まるでキラキラ輝く星のように、輝いて見えた。

「授業……さっぱりわからん。」

授業中、そんなことを、呟いた。先生にこの声が聞こえないように、窓の外を眺めながら、ノートをとっていた。先生は何を話しているのか。代入?方程式?ちょっと!先生もう一回言ってください!!!なんて、心の中で叫んでも、先生の耳に入るわけもなく、私は、先生が、黒板に書いた、たくさんの、文字を、ただ、ひたすらノートに写すことしかできなかった。

隣の、席の男子はすやすやと、幸せそうな顔で寝ていた。教科書で、顔をかくして、先生にばれないように、しているらしい。中には、鉛筆を持ちながら、寝ている人もいる。

私は、そんなスローモーションのような午後の授業に疲れて、ふいに窓の外のグランドで体育の授業をしている、生徒に目が行った。




なんか、楽しそうだなー。サッカーしてるみたいだ。ゴールが決まった瞬間、みんなでハイタッチして、白い歯をみせて、精一杯笑って、悔しがって……こういうのを青春と、呼んでいるんだろう。

汗でキラキラ光っている、みんなの髪の毛がオレンジ色の夕日とうまく合っていて、綺麗だった。


「あ……」


一人だけ、サッカーが飛びぬけて、うまい人がいた。相手チームのガードを、軽々とかわし、みんなにパスをして、みんながボールを蹴れるように、チームのことを考えてる人。
この人……・・・!!!!桜の人だ!えーっと…駿だっけ。


彼は、いつも会うときより、がむしゃらで、小学生のように、嬉しがったり、笑ったり、ふざけあったりしている。
チームの一人一人に声をかけ、距離を縮めている。この人……すごい。


私は、駿を、いつも目で追うようになった。水曜日の6時間目は駿は体育でグランドにくるから、駿を見れる。

そのように、考えてしまって、毎週、水曜日の6時間目が待ち遠しくなった。


これも、恋の魔法なのかな。



あ!私は、なんか視線を感じ、またグランドを見た。すると、駿が私の存在に気づいたのか、こっちをみていた。ん?なんか言ってる?ん?聞こえない!もう一回!


「……てろ。」

え?何?

「…みてろ!」

え?みてろって、駿を?私は何がなんだか、わからないまま必死に駿の姿を追った。駿は、チームの人にパスをもらうと、相手チームを余裕でかわし、シュートを放った。
そのシュートは美しくカーブして、ゴールキーパーが触れることもなく、決まった。


おお。すごい!!!!わたしは、口パクで「す ご い」といった。すると、駿は大きくガッツポーズをした。




私はこのとき、頭の中に二文字の言葉が浮かんだ。



「す   き   」







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