まだ好きです(完)
★雛side★


「やばっ!!!いってきまーすっっ!!!」

私は、着慣れた制服に袖を通した。ボロボロの靴をはいて、鏡を見て、くるんと一回転してみせた。

「靴、新しいの買わないとなー。」

私は、靴のつま先をとんとんとたたいて、ドアを開けた。

「雛ー。あんまり、遅くならないうちに、帰るのよー。」


はーい。私は、大きな声で返事をすると、いつもの空を見上げた。昨日の雨で葉の上には、キラキラ輝く雫が乗っていた。


運動会から一ヶ月。もう、冬に近づいてきて、早くも、移行期間になった。大きな桜の木も、葉が全部散って、寒そうだった。


「……あ。」


私は、通り過ぎる近所の人に紛れている、一人の男子に目がとまった。一人だけ、私には違ったオーラにみえるの。


「駿。」


「今日、まじで寒い。」

駿はそういって、ぶかぶかの学ランのズボンをもっと下げて、手をこすり合わせた。


「駿。今年の誕生日は何しようかー?」


「雛が楽しめるものがいいね」


駿は、そういって私の手を取った。


「通学デート」


駿…身長のびた?ちょっと目線が上にみえる。


「駿…?好きだよ。」


私は、小声で、こういうと下を向いた。学校に向かう生徒はみんな、あわただしそうに校門にむかっている。でもクラスが違う私たちにとっては、この時間が貴重で、ゆっくり歩いていたかった。



「言われなくたって分かってるー。」


駿は、そういってまたこっちを見て、笑った。



今しかできないこと、今だからできる事。それを、見つけて、ただ突っ走ってみて。新しい「自分」がみつかるから。


何回も何回も恋して、それでこそ強くなれる。



「駿ー!!!」


私は、駿の大きな背中目指して、走った。



大きな空に負けないくらいの、この愛をぶつけたくて、今日も走る。



君のために。



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