平穏な愛の落ち着く場所
darling place 再会

1.


加嶋崇《かじまたかし》は、従姉妹の
冴子《さえこ》結婚式の為、
横浜に来ていた。

大がかりなものは、すでに都内で済ませて
おり、今日は親しい友人だけのものだ。

冴子にどうしてもと頼まれて、
予約で埋まっていたこのホテルに
何とか披露宴を設けることができた。

『ったく、勇斗に借りが出来たな』

このベイサイドホテルは、
親友藤木勇斗《ふじきゆうと》が見事に
復活させた。
海を臨む開放的なチャペルは、
正に人生の船出に愛を誓う二人にとって、
最適の空間だ。

このエリアの再開発を手掛けていた崇は、
正直、このホテルは外資のチェーンに
売り渡すしか生き残る道はないと
思っていたのだが。

まさか、たった三年でここまでとは。

親の世代にステイタスのひとつにあげられた
この老舗ホテルでのブライダルは、
その子供達に同じ場所でーという
親子の伝統、絆をテーマにし、
常連客達の心を上手く掴んだ。

あいつは昔からやると決めた事は
必ず成功に導く男だった。

崇は親友の仕事に、誇りと羨望を抱いた。

あいつがこれを成し遂げたのは、
さくらちゃんがいたからだろうな。

まさか、蒼真《そうま》の次に結婚する
のが勇斗だとは思わなかった。
いや、それを言うなら蒼真の早すぎる結婚
とて予想外もいいとこだ。

俺たち仲間、四人とも三十を過ぎて
必要に迫られなければ、結婚なんかしない
と思っていたのだが。

すでに二人は子持ちで、零士《れいじ》
には、決められた婚約者がいる。

結局、今年三十になった俺だけが、
必要も感じず、一人か。

まあいいさ。
俺はするつもりはない。
代わりに父が充分やってくれた。

あの人はもう一度位するだろうか?

まさか、この歳になって兄弟が
できるなんて事は、勘弁して欲しい。

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