平穏な愛の落ち着く場所
6.
翌日、
目眩のおさまった千紗は退院できることになり、会計をしようと受付へ行ったが。
『手続きは全てお済みですよ』
若い事務の女の子に笑顔で《素敵な彼氏さんですね》と言われた。
『やっぱり』
そうじゃないかと思ったけれど……
『ええ!昨日もとても慌ててらして』
『え?あっやだ、そうじゃないんですよ』
『ご心配をかけないように、どうぞお大事に してください』
ニッコリされてはむきになって否定するのも大人げないと思って、千紗は軽く頭を下げて
ロビーで待つ彼の所へ向かった。
『まったくもう……』
支払いに行くって言った時のあの顔で、予想はしていた。
だからって、甘える訳にはいかない。
『どうしてさっき言ってくれなかったの?』
『無駄な争いを避けただけだ』
『崇さん!あなたに払ってもらう…』
『給料から引いておく』
『えっ』
『ほら、急げ。あの娘が待ってる』
そう言って彼は私の手を引いてどんどん駐車場へ歩く。
引くつもりなんかないくせに。
『本当に引いてくださいね』
『ああ。それよりも、ほらっあそこ』