平穏な愛の落ち着く場所


『え?これから!?動物園?!』


『俺は今朝の電話で断ったんだが……』


崇さんが、いつの間にか少し離れた所で
クインを撫でながら唇を噛む紗綾を顎で
指した。


『俺と紗綾だけで行ってもいいが?』

『えっ』

まって、今なんて?

紗綾って

そんな自分の娘みたいに!!


病院に紗綾を送り届けてくれた蒼真さん一家が動物園に行くと知り、紗綾も行きたがっているのはわかる。


『おまえはクイン連れて帰って寝てろ』

どこへ帰ってろって言うつもり?!

いいえ、その前にあなたのその態度は何かが違ってるでしょう?


『ちょっと待って!!』


混乱した頭を整理したくて、つい大きな声に
なってしまうと、驚いた紗綾が弾けたように駆けてきた。


『おじさん、いいの。
 さあや、またこんど、ままといくから』

聞き分けのいい娘に胸がチクリと痛んだ。

普段からあまり我が儘を言わない子だけど
こんな風に私に気を使って聞き分けがいいと余計に辛くなる。

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