平穏な愛の落ち着く場所


『何が狼だ!』

蒼真さんが彼に抱きつくわかなちゃんを奪って抱き上げた。

夏音さんはああ言っていたけれど
わかなちゃんが蒼真さんを大好きなのは
一目瞭然だった。

《ああいう男はお父さん許さないぞー》
って、頬ずりするとわかなちゃんが楽しそうに、きゃっきゃっと笑う。




その光景に、


わかなちゃんの幼い子供らしい笑い声に、



胸がグサリとえぐられた




溢れる父親の愛情と

それに答える純真な笑い声



そのあたり前を目の前にして、震えそうになる唇をグッと噛み締めた



その時だった



『じゃ俺らは帰るか』


彼がひょいと、紗綾を抱き上げた


『しゃあやおねーちゃま、
 たかしゃん、ゆうえんちおやくそくだよ』


『うん、わかなちゃん!おやくそく』


紗綾が嬉しそうに小指を差し出して
蒼真さんに抱かれて同じ高さのわかなちゃんと指切りをした。


千紗のえぐられた胸から、春の日射しのようにあたたかいものが溢れ出した。


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