平穏な愛の落ち着く場所


『…… ……』


『『ぶっ!』』


変な間のあと、二人同時に吹き出した。


一旦笑いだしたら、なぜだか止まらなくなり
夏音さんと二人、目尻の涙を押さえるほど
笑い転げてしまって、周りの人が何事かと
私たちを見た。

話したことすらなかったのに、旧友のようにできるのはこうして共通の思い出があるから
なのかしら?

冴子や渚とは違うけれど、学生時代の懐かしい思い出で、ずっと昔からの友達のように笑いあえる。


『加嶋さんには内緒にしてあげます』

『そっちこそ、蒼真さんに内緒でしょう?』


お互いの腕を軽く叩きあって、また笑った。

その笑顔のまま夏音さんがこちらに手を振るわかなちゃんに、手をふりかえす。

『でも今なら加嶋さんが一番人気ね』

『えっ?』

『あんな優しい顔を隠していたなんて 
 みんな、ギャップ萌えに間違いないわ』

『そうね……』


本当に。

付き合っていたあの頃、私はこんな彼を
想像していなかった。


『あーもー何あれ、本当にあの崇王子?』

『えっ……』


さっきの蒼真さんと同じように、彼が振り返って私を見た。

頬が赤くなるのがわかって、咄嗟に下を向いてしまった。

確かにチクチク…ううん、グサグサ視線を
感じる。


『ねぇ千紗さん、どうして加嶋さんじゃ
 ダメなの?』

『へ?』

顔を上げて、思わず間抜けな声がでてしまった。

ダメって?私が選ぶ立場にないのに
何を言うの?

『ダメも何も……』

『ごめんなさい、余計な事だったわね』


夏音さんはそれ以上は何も言わなかった。


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