平穏な愛の落ち着く場所
『あれっ?!もう都内?
ごめんなさい、眠ってしまって』
『ああ、かまわない。
それより本当に新宿でいいのか?』
『ええ。さっきメールをして、
娘をあずかってもらっている人と
そこで待ち合わせる事になったから』
『そうか。子供はいくつだ?』
『今年四歳になるのよ』
少し眠ってすっきりしたのか、
今日再会してから初めての笑顔を見た。
『もっとゆっくり歩んで欲しいのに
あっという間に大きくなってしまうわ』
あの娘の成長を止められるものなら
そうしたいと願う反面、一人で出来る事が
増える度に、大きな喜びを得られる。
これからはもっと生意気になって
私をイライラさせるようになるんだわ。
千紗はそれを喜ぶべきか、恐れるべきかを
考えて、にっこり笑った。
あの人は私を何もできない愚か者だと
思っているかもしれないけれど、
あの娘を見たらそんな事は言えないはずよ
『おまえが母親とはね』
『そうね、心外だって言いたいけれど、
あなたにそう言われるのは仕方ないわね』
千紗はくすっと笑った。