平穏な愛の落ち着く場所

再び動物を見ては、歩きながら夏音さんと
子育てや昔話など他愛のない会話をした。

若菜かなと思って聞いた、名前の漢字が
和を奏でると書くと聞いて、蒼真さんと
夏音さんの二人の子にぴったりの名前だと思った。

それから、
さっき言っていた《ここにもいた》は
藤木さくらちゃんの事で、彼女の事は私も知ってるって言うと、また王子話で笑った。
そして藤木さんちの咲希ちゃんは、さくらちゃんの子供だとも教えてもらった。


『ままー』

子供達がキリンに飽きてもどってきた。

『そろそろランチにしましょうか』

『そうですね』


夏音さんが子供たちを連れて蒼真さんと
食事ができるベンチのある方へ向かった。

紗綾がお姉ちゃん風きかせて和奏ちゃんの
手を引いている。

姉妹がいたら、あんな風に可愛いのに。

私には年の離れた兄が二人だったから
姉妹のいる子に憧れていた。

紗綾にも…………

叶うならあと2、3人は欲しかった。

赤ちゃんの、あったかくてぷにぷにの
あの独特の感触

私の腕に収まる小さな命

睡眠不足や不安で途方もなく長く感じるけれど、あっという間に過ぎてしまう幸せな時間

これまで紗綾と二人の生活を守ることに
必死で、一度も考えたことがなかったけれど
私はもう二度と子供を産まず、このまま人生を終えるの?

紗綾が成長し自分の人生を歩き始めたら
私は何をしたらいいの?

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