平穏な愛の落ち着く場所
『ちゃんと子育て出来てるのか?
ひょっとして、娘の方が
しっかりしてたりしてないか?』
『そんなこと!……ないわよ』
『なんで最後が小声になるんだよ』
崇は声を上げて笑った。
車はすでに新宿駅近くに来ていた。
『その辺でかまわないわ、適当に止めて』
『子どもを連れてくれば家まで送るぞ?』
突然沸き上がってきた、千紗の子供を
見てみたい衝動に崇は戸惑った。
子供など、どう扱っていいのかわからない。
『平気、家まで道が狭いし複雑だから
それに、あなたお仕事でしょ?』
『まあそうだが……』
ここで別れる……
たぶん会うことも、中々ないだろうな。
それでいいじゃないか、
いまさら、何を未練がましい事を
思っているんだ?
助手席に座る彼女が、あまりに自然で
もう何年も前の出来事が嘘のように
感じるのは、感傷的になっているせいだ。
崇は、駅のすぐそば路上パーキングの枠を
無視した列にハザードをつけて止めた。