平穏な愛の落ち着く場所
『寝たのか?』
シャワーを浴びた彼が部屋にそっと入ってきた。
『ええ、この仔もここでいいの?』
『ケージに入ると鳴いて煩いから仕方ない
仔犬のくせに重いから気を付けろよ』
口振りからいって、どうやらクインはいつも
崇さんと寝ているらしい。
千紗はクスッと笑った。
『なんだよ?』
『知らなかったわ、あなたがこんなに甘い
なんて』
『俺もだ』
崇は起こさないように、そっと紗綾の柔らかいピンク色の頬を指で撫でた。
俺を魅了する小悪魔は、こうしていると本当に天使だ。
『一人にして大丈夫か?』
千紗は笑顔でうなずいた。
あれだけはしゃげば、ぐっすりだと思う。
崇さんのマンションへお泊まりに行くと知って、飛び上がって喜んで、車の中でも喋りっぱなしだったし、ここに着いてからもクイン相手に大興奮だったもの、朝まで起きないはず。
『クインがいるから大丈夫よね』
千紗は片方の目だけ開けて見上げた仔犬の
頭を撫でて、彼と部屋を出た。