平穏な愛の落ち着く場所
2.
崇は千紗の隣に座って気持ちを落ち着けるようにコーヒーを飲んだ。
ここまできた。
焦ってしくじるわけにはいかない。
蒼真に言われたことを思い出して、慎重に切り出した。
『俺たちのことだが』
カップをテーブルに置くと、真剣な眼差しで彼女を見つめた。
『ええ』
千紗も飲んでいたカップを隣に置く。
『俺は昔のような関係になりたいなんて
思ってないぞ』
『ごめんなさい、わかっていたけれど……』
千紗のことはわかっているつもりだ。
素直にうなずく彼女の手を握る。
俺がわかっていなかったのは俺自身なんだ。
『あの頃の俺と今の俺は違う』
『そうね』
重ねた手が微笑んで握り返された。
『あなたが子供好きなんて、思いもしなか
ったわ』
『それは俺が一番驚いているさ』
子供の扱い方、それも女の子なんてどうしていいのか本当は今だってわからない。
だが、紗綾といるのが楽しい。
あの娘の話を聞き、笑い声を聞くと心から癒されるんだ。
それにさっき見たあの寝顔……思い出して
自然と顔が綻んだ。
あれを護る為なら、何だってしてやれる。