平穏な愛の落ち着く場所
『瞳を開けて』
千紗は、ハッと息を飲んだ
射るような真剣な眼差しに
心を丸ごとぎゅっと鷲掴みにされる
『千紗』
音が消え、時が止まった
呼吸するのも忘れて彼を見つめる
『愛してる』
言葉と共に落ちてきた唇が、これ以上ないほどゆっくりと優しいキスをくれた。
唇が離れると、止まっていた時が元通りに
動き出し、洪水のように感情が溢れだした。
何か言わないと、と思うのに
唇がわなわなと震えて言葉にならない。
『せがまれて言ったんじゃないぞ』
崇は照れ隠しのように言ってから、
瞳の揺れる彼女をグッと引き寄せて
コツンと額を合わせる。
『生まれてから誰にも言ったことがなかった
から、使い方がわからなかったんだ』
彼女を笑わせようと思ったのに
声が低く掠れて囁くようになってしまった
自分で思うより感情が昂っているようだ。
『これからはもっと上手く使うよ』
彼は苦笑いしながら言った後に、
ふっと頬を緩めて、本当に鮮やかに笑うから
千紗はついに感情を押さえきれなくなって
わっと子供のように泣き出した。