平穏な愛の落ち着く場所



『千紗さま』

『南原さん!』

『だいたいの状況はわかりました』

『あの人はどこ!!』

『これを……』

南原は一通のメールを開いて、千紗に携帯を渡した。

Sub 無題
From  野口元

四方山とのことをぶち壊したのは千紗だ!
あいつが俺の人生の邪魔をするなら、どうなるか思い知らせてやる!娘はもう二度とあいつの所には行かせない、おまえは必ず親権を奪え!!あの女を一生不幸にしてやるんだ!

千紗から乱暴に携帯を奪って見た崇は、それを床に思いきり投げつけた。

『地獄に落としてやる!』

千紗が何か言葉を発しようとする前に、崇がものすごい形相で怒りのオーラを発した。

『崇さん』

『何も言うな!!
 限界はとうに越えているんだ!』

『でも……』

『いいか!あの娘の父親は俺だ!
 これまでもこれからも他には存在しない』

あの男を紗綾の父親とは二度と言わせない!

血が繋がっているというだけで、あの男が言ったりやったりする事に対して払う犠牲など、あの娘には一切ない!!

『……はい』

こんな状況じゃなかったら飛び上がって喜んだのに、今の千紗はただうなずくしかできなかった。

『おたく弁護士だったな』

崇は南原を振り返った。

『はい』

『これは犯罪行為か?』

南原は私の携帯を壊したのは器物破損罪ですと言いたかったが、この場でそれは許されないだろうから、その件は口をつぐんだ。

『今のところ手続き上では紗綾様に会う権利
 において、二人の間に厳密な取り決めが
 ないので問題にはなりません』

『そうか、ならば今すぐその厳密な取り決め
 を書類にしろ』

『はっ?』

『俺の弁護士がもうすぐここに来る
 急いだ方がいいぞ。内容によっては
 仕事を失うことになるからな』

『崇さん!』

『それは脅しですか?』

『わかってないな』

『何を?』

『野口元は誰を敵にしたのかを、だよ』

ここへきて、初めて崇の口元が上がった。

『ほら、来たぞ』


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