平穏な愛の落ち着く場所


南原は千紗とは別の反応をしていた。

『あっ、あなたは……』

『正義の味方登場!って僕意外と有名人?』

にっこり笑う彼に、南原は驚いた。

弁護士会で彼を知らない者はいないだろう
引く手あまたの人気弁護士、
溝口N響《みぞぐちニールひびき》。

二年前に大手M&P法律事務所から独立して
個人事務所を設立すると、真っ先にあの
藤木グループの全ての部門と契約して
その名を轟かせた。

更に加嶋建設と岬コーポレーションの
海外部門と契約する頃には、
若手の弁護士たちが憧れる事務所ナンバーワンに成長している。

確か……先頃では書道家でありながら
陶芸家としてもその作品に価値が高まっている、結城蒼真の顧問弁護を引き受けたことでも業界内では有名だ。

『崇!!居場所がわかったぞ!
 ったく警視総監は話が長いから』

『蒼真さん?!』

『わーい蒼真だー』

『げっ、ニール……』


なんと、あれは!!
噂の結城蒼真じゃないか!

『あっ』

南原はそこで初めて、目の前の男、
千紗の相手が加嶋建設の専務だと気づいた。

そうだ!最近父親が清純派だった元女優との離婚で揉めている時に見た顔だ。
確か彼の母親は、二番目の妻で世界中のセレブから愛されている宝石デザイナー
kyoko . Saejimaだったな。

という事は、藤木グループの社長も岬コーポレーションの専務もご学友だ。

確かに、彼の言う通りだ。

たった今、南原は野口元が誰を敵にしたのかを、思い知った。

< 153 / 172 >

この作品をシェア

pagetop