平穏な愛の落ち着く場所
4.
保育園を出て、崇の車で千紗は伊豆へ向かっていた。
蒼真さんが宇陀川さんに頼んでくれて……
(正確には蒼真さんが、書道の生徒さんである警視総監の宇陀川さんに、野口の居場所を突き止めてもらった)
野口は伊豆に向かっている事が判明した。
なぜ紗綾を連れてあんな所へ?
高速を降りると、千紗の座る助手席側に海が広がり、次第に景色が観光地特有のものに変わっていく。
『紗綾大丈夫かしら……』
『余計なことは考えるな』
『でもっ、どうして伊豆へ?あの人の考えて
いることがわからないわ』
『イカれた野郎の頭の中なんてわかって
たまるか』
冷静に言っているつもりだろうけれど、彼の声は怒りを含んでいるし、ハンドルを持つ右手はきつく握られている。
『そうね……』
千紗は無理矢理笑おうとして失敗した。
気を緩めると涙が溢れだし発狂しそうになる
背筋を伸ばして深呼吸した。
ギアに置かれていた彼の左手が私の手にぎゅっと重ねられた。