平穏な愛の落ち着く場所
ガラガラと引戸になっている入口を勢いよく開けると《いらっしゃい!》とやけに若い大将の声に迎えられる。
千紗は店内をキョロキョロと見渡した。
『お一人様ですか?』
奥様であろう人が愛想よく対応すると
奥のカウンターに一人で座っていた男が千紗を見て立ち上がった。
『紗綾は!!』
千紗が叫ぶと、野口は舌打ちして大股でこちらへ向かってきた。
『なぜここがわかった!』
言いながら千紗の腕を強く引き、入り口から外へ押しやる。
『紗綾はどこなの!』
野口を押し退けて中を見ようとすると
彼は信じられない言葉を吐き出した。
『残念だがここにはいないな』
『なに言ってるの?!あなたが保育園から
連れ出したんじゃない!!』
『なんのことだ?』
白々しく惚ける野口に、追いかけてきた崇が
怒号で掴みかかった。
『ふざけるな!おまえが連れ出した証拠が
監視カメラに残ってるぞ』
『ちっ、それよりおまえ誰だよ!』
野口が胸ぐらを捕まれた手を払い除けようと
凄む。
『千紗!』
崇は中を見るよう顎を動かした。
千紗はすぐに店内へ戻った。