平穏な愛の落ち着く場所

『ははーん、千紗の男か。
 あんな可愛いげのない女のどこがいい?
 ああ、おまえも実家の財産目当てか?』

野口が何とか腕を外してわざとらしく服を直しながら、厭らしく笑った。

崇は躊躇わなかった。

バキッと生々しい音がして野口は地面に倒れた。

『なにをするっ!』

『おまえのようなクズは世の中から消えろ』

『何だと!』

立ち上がろうとする野口を容赦なく蹴り倒した。

『警察に連絡する、これは誘拐だ』

『自分の娘をどこに連れていこうと、とやか く言われる筋合いはない!』

野口は砂利の中から少し大きめの石を選んで持った。

『紗綾はおまえの娘ではない』

『何だと!ふざけるな!』

『ふざけてるのはおまえだ!犯罪者になりた
 くなければ今すぐ居場所を言え!』

『あれは俺の娘だ!』

『紗綾は俺の娘だ!』

『なにっ!』

ガラガラっと音がして千紗が飛び出してきた。

崇は野口を足蹴にして押さえながら、視線をそちらに向けた。

『いないっ』

千紗は崇を見て狂ったように首を振って、
倒れている野口の上に駆け寄り馬乗りになった。

『どこへやったの!ねえ!どこなのよ!
 返してよ、お願い紗綾はどこ!』

『知るかっ!』

野口が胸を叩く千紗の手を払い除け、思いきり突き飛ばした。

『このっ!!』

二人は闘犬のように飛びかかった。

『イヤーっ!!』

起き上がって、千紗は悲鳴をあげた。

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