平穏な愛の落ち着く場所
6.
役員専用のエレベーターに乗るまで
崇は一言も口を聞かなかったし、
千紗とて、この状況がにわかに信じられず
文句の一つも言えなかった。
『どこへ行くの?』
エレベーターが上昇しだして、
先に我に返ったのは千紗だった。
崇はまだ彼女の腕を掴んだままで、
内心の怒りを燻らせていた。
『私、仕事中なの……
こんなことして、クビになったら困るわ』
そう言ってから、その事実に千紗は青ざめた
仕事を失う訳にはいかない!
紗彩との生活を奪われる訳にはいかない
『崇さん!』
千紗は捕まれている腕を振りほどいて
逆に彼の腕を掴んだ。