平穏な愛の落ち着く場所

薄っすら涙を浮かべて懇願するような
彼女を見て、崇は弾かれたように
我に返った。

『千紗』

『私、戻らないと……』

『ダメだ!事情を聞くまではどこにも
 行かせない!!』

『そんな……お願いよ、クビにされたら
 困るの』

『俺がそれを決める立場にはないと?』

『あっ……』

『いいか、何も話さずに戻るつもりなら
 それこそ仕事を失うと思え!』

『………』

千紗は彼の強い言い方に、忘れかけていた
恐怖を思いだし、何も言わずにうなずいた。

急に怯えた顔をしてうなずく彼女を見て、
崇は自分を蹴り飛ばしたくなった。
そんな顔をさせる様な事はしない。
ただ、話がしたいだけだ。

エレベーターが開き、自分のオフィスに
千紗を入れて、ブラインドを下げた。


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