平穏な愛の落ち着く場所
一度深く息を吸うと、
拳を握って、胸を張った。
『私…私は栄養士の資格があります。
ちょうど一年前、こちらに勤める友人が
社員食堂で、社員さんの健康管理や
食事のアドバイスができる仕事が
あると紹介してくれました』
急によそよそしい態度に変わった彼女を
いぶかしがるも、崇はうなずいた。
『何があったんだ?』
『何とおっしゃいますと?』
『離婚の原因だよ』
『それは……必要ないと思いますが?』
『はっ?』
『加嶋専務、離婚の原因は仕事とは
関係ないと思いますので、申し上げる
つもりはありません。私はきちんと
履歴書も提出し、面接も受けて採用
していただいています』
『か、加嶋専務だと?!』
思わず崇の声が裏返った。
『申し訳ありませんが、これ以上
御用がないのでしたら、勤務中ですので
失礼させていただきます。
それから、二度とこのようなお戯れは
なされませぬよう重ねてお願い申し
上げます』
『おいっ!』
『失礼しました』
『千紗!!』
彼女は毅然とした態度で、頭を下げると
しっかりとした足取りで部屋を出ていった。