平穏な愛の落ち着く場所
7.
唖然としてそれを見ていた崇は
入れ違いに飛び込んできた冴子の声に
ようやく我に返った。
『崇!!千紗に何をしたの!』
『なんだって?』
加嶋専務とよそよそしく呼ばれたショック
から、まだ立ち直れていない。
『だから、千紗に何をしたのよ!』
俺が何をした?
……………?!
何かしたのはあいつの方だ!
『おまえこそ!
何でもかんでも俺に隠しやがって!
いったい全体何がどうなってるんだよ!』
『あなたって人はまったく……』
冴子は深いため息をついた。
偶然出会うように仕向けてきた
自分達にも責任はある。
いいえ、この事態は私の責任だわ。
考えて見れば、この人が
《なんでここに?》なんて言って、
和やかな偶然の再会が
出来るはずがなかったわ。
でもまさか、沢山の目があるなか強引に
彼女を連れ出すとも、思わなかった。
本人は認めないだろうけれど、
思ったより彼女が深い所にいるわね。
冴子はもう一度ため息をつく。