平穏な愛の落ち着く場所


崇の邪悪な雰囲気を察した冴子は
ついに折れた。

『もうっ!……いいわ、これだけよ!
 あのこのお金は全部あのろくでなしが
 奪ってしまったのよ……
 それこそ、実家にある分まで全て』

『なんだって!?』

『あのろくでなしはね、自分の病院の
 経営が危うくなっていても、気にせず
 遊び呆けて、影で必死に支えていた妻に
 任せっきりだったのよ。もちろんあの家
 の両親はその事は知らないわ』

崇の顔が目に見えて険しくなる。

『なぜ奴はまだ生きているんだ?』

暴力的な怒りが巻き起ころうとしていた。

『千紗がそれを望んでいるから』

『なにっ?』

『私だってあのろくでなしを抹殺する
 方法を百も思い浮かべたわ。
 浩輔も後は俺が埋めてやるからって。
 でも千紗が紗彩ちゃんの父親だって
 言ってかばうのよ』

冴子はイライラとその場で足を踏み鳴らした

あのろくでなしは、父親なんかじゃないって
賢い紗彩ちゃんですら、とっくに気づいて
いるのに、どうして親友はあんな男を
庇うのかしら?

『そんな馬鹿な……』

『いい?!わかっていると思うけど、
 同情して援助したりしたら、
 冷たい態度をとられるだけよ』

『くそっ』


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