平穏な愛の落ち着く場所
『あの……』
佐々木は何か言いたい事を躊躇っている。
まさかと、思うが和田さんにからかわれて
から、何だか意識してしまう。
『すみません、私、戻りますね……』
『あっ!これっ』
千紗が軽く頭を下げて行こうとすると
意を決した佐々木が後ろ手に持っていた
チケット差し出した。
『え?』
『友人に貰ったんですが、今週の日曜日に
良かったら一緒に……』
差し出されたチケットを見つめたまま
千紗は困った顔をした。
『ごめんなさい、日曜はこ……』
『あっ、そうですよね、急に言われても
予定がありますね!』
千紗が最後まで言い終わらないうちに、
佐々木がチケットを引っ込める。
『佐々木さん、私…』
『いいんです、気にしないで下さい!』
『あっ……』
佐々木はぎこちない笑顔のまま
その場を去っていった。
『嘘みたい……』
まるで高校生のような甘酸っぱさに
千紗は心の中でもう一度、
《嘘でしょ?》と繰り返した。