平穏な愛の落ち着く場所
darling place 戦い
1.
『ままーあきとくんちはね、まめしばで
しおりちゃんちはといぷーっていってた』
『といぷー?』
『もー!といぷーどる、よ。
てぃーかっぷはたかくてだめだって
いわれたんだって』
『そう』
保育所の帰り道、紗綾は今日の出来事を
饒舌におしゃべりしてくれる。
娘の目下の関心事はペット。
つい先日までの、兄弟が欲しい攻撃に
比べたらいくらかはマシね。
でもかわいそうだけど、我が家にはまだ
ペットを飼う余裕はない。
『ねえ、どうしてさあやはかっちゃだめ
なの?まえにあーちゃんがぺっとか
っていってたけど……』
紗綾はそこでいったん難しい顔をして
繋いだ手を引いて千紗を見上げた。
『まま、ぺっとか、ってなに?』
『さあ、何かしら?』
イントネーションが違うと全く別のものに
聞こえる言葉の面白さに、千紗はくすくす笑って娘を抱き上げた。
『さあやは何が飼いたいの?』
『えっとねー』
マンションのオートロックにキーを
差し込もうとして、目の前に影ができた。
紗綾が首に抱きついてくる。