平穏な愛の落ち着く場所
『問題はコネじゃないわ!』
『仕方ないだろ、社食の仕事が好きだと
他に資格がないと泣くのだから』
『泣く?!』
冴子はショックで言葉を失った。
嘘よ、彼女は離婚の話をした時だって
ほとんど泣いてない。
『ああ、子供のように泣いていた』
千紗が泣いた……
これは親友の面目を気にして嫉妬している
場合ではない。
『それで?まさか今まで通りとは言わない
わよね?』
『もちろんだ。
あいつには次の人材を確保していたから
仕事の量が減ると伝えてある』
『それじゃ他での仕事を増やすわよ』
『ああ、だから雑用を頼んだ』
『え?雑用?』
『俺のマンションのハウスキーピングだ』
冴子と浩輔は互いに驚きを上手く隠して
目配せしあった。
『千紗がそれを引き受けたの?』
『ああ、別にこき使うつもりはない。
適当に簡単な用を頼むさ』
『そう……』
冴子はそれ以上言葉が見つからなかったが、
夫は違ったようだ。
『どうやった?』
『はあ?どういう意味だ?』
『そもそも、その提案はいつ思い付いた?』
『いつ?咄嗟にだが……』
それが問題か?と眉間に皺を寄せる崇に
浩輔は、今にも笑いだしそうだ。
『浩輔!行きましょ!』
『いや冴子、でも……』
『いいから!』