平穏な愛の落ち着く場所
一通りの部屋を確認する頃には
千紗の怒りはピークに達していた。
『どういうつもりよ!!』
頭に血が上っていて、
時間や都合などお構い無しに携帯を
取り出すと、ボタンの1を押した。
相手が中々出ない理由も考えずに
ひたすらコールを続ける。
留守番電話に変わる直前、くぐもった声が
応答するや否や、千紗は怒りをぶちまけた。
『どういうつもり?』
『は?』
『私を馬鹿にしてるの?!』
『おまえ、千紗か?』
『そうよ!あなたに憐れんでもらっている
可哀想な千紗よ』
『何を……悪い、今ちょっとたて込んでて
おまえの相手をしている暇がない
家のことなら適当にやってくれ』
そう言いながら、電話の向こうで誰かに
指示を出しているようだが、
そんな事は、今の千紗には関係ない。
『こんな事されるなら、いっそ実家に
頭を下げて施しを受けた方がましよ!』
言った途端に、千紗はワッと泣き出した。
『おっおい……何があった?!』
彼は相変わらず声を潜めていて、
こちらの話には大して気を止めていない。
『あなたなんか……崇さんなんか大嫌い!』
一方的に電話を切ると、
千紗は目の前にあったクッションを
思いっきり投げつけた。
そしてそれを拾うと叩きつけては殴る。
気がすむまでそれを繰り返して、
力尽きると、その場で泣き崩れた。