平穏な愛の落ち着く場所
慌てて自宅に戻った崇が見たのは
無惨に羽毛が飛び出ているクッションと、
それを抱きしめたまま眠る彼女だった。
『何なんだよ……』
彼女の頬に濡れた涙の跡がなければ
揺り起こし、叱り飛ばしている所だ。
傍にしゃがんで、そっとはりついた羽を
取ってやり、そのまま髪を撫でる。
昨日までの報告を聞き、たまっていた
書類の一つに不備を見つけ、その綻びが
大きな失敗になりかねないとわかると
浩輔を呼び、急いで修復にかかっていた。
千紗からの電話は、その時だった。
携帯を耳に当てながら、指示を出していると
突然、彼女の泣き声が聞こえてきて
ぎょっとして、思わず部下に向かって
突き付けていたペンを落としてしまった。
何とか平静を装って、改めて部下に指示を
出していると、今度は大嫌いだと言われ
電話は一方的に切られた。
その後、何度かけ直しても
繋がらなくなってしまったのだ。
気にするまいと思えば思うほど、
集中できず、結局全て仕事を丸投げし
浩輔の驚く顔を無視して
帰って来てみれば、これだ。
『俺が何をしたんだ?』
指の背で涙の跡を拭うと、ゆっくりと
彼女の瞼が上がった。